私たちの研究

医学・生命科学研究の発展、および高度な医療の発展は、社会の中で多くの人々に恩恵をもたらしています。その一方で、研究が社会に理解され、医療が信頼されて行われるためには、研究や医療に伴う倫理的・法的・社会的課題(Ethical , Legal and Social Implications ,ELSI)への取り組みが不可欠です。

当教室では、医学・生命科学・医療の発展に伴う課題を分析し、対応策・解決策を提案するための研究を行っています。

これまで生命倫理というと科学・医療の発展を抑制する存在というイメージがあったかもしれませんが、私たちは現場の研究者医療者と、人文社会学系の専門家、および患者さんや市民との協働を促進することで、「ものごとを前に進める」ための活動を行うことを目指しています。

 

1.医学・生命科学研究の倫理的・法的・社会的課題やポリシーに関する研究

iPS細胞、ES細胞などの幹細胞が、再生医療をはじめとする新しい医療や医学研究の発展に役立つとして注目を浴びています。また超高速シークエンサーの登場により多くの人のゲノムが短時間・低コストで解読できるようになっています。このような研究を行う際には、研究の発展に伴う倫理的・法的・社会的課題に対する取り組みが必要になっています。この対応として、政府ガイドラインの内容、あるいは策定のための体制について調査分析するとともに、国際的な視点も含め、研究現場と密接に関わりながら研究プロジェクトレベルおよび政府レベルでのポリシーについて検討を進めています。

論文発表

  • Cell, 139:1032-1037, 2009. Nature Methods, 7:28-33, 2010. Current Pharma. & Personalized Med., 8, 92-96, 2010. Cell Stem Cell, 6, 415-418, 2010. Genome Med, 6:39, 2014. Genome Med, 6:118, 2014. J. Human Genet., 60, 225-226, 2015

2.ゲノム医療実施に伴う倫理的・法的・社会的課題やポリシー策定に向けての取り組み

ゲノム情報を用いた個別化医療を推進する際に生じる倫理的・法的・社会的課題、特に「偶発的所見(※1)との適切な向き合い方について、AMED(※2)研究費を受け、研究しています。具体的にはそういった向き合い方の基本的な枠組みとそれが正当化できる根拠について取りまとめ、患者さんに返す場合の条件や具体的な方策を検討することに取り組んでいます。そして、その成果をもとに、日本における偶発的所見への対応に向けた提案を行うことを目指しています。

※1 ゲノム解析を行う過程で偶然見つかる、提供者や血縁者の生命に重大な影響を与える疾患の所見(incidental findings)

※2 国立研究開発法人日本医療研究開発機構

3.臨床医療の倫理

「医の倫理学」教室(当教室の前身、2001年~)の発足以来、取り組んできた臨床医療の倫理に関する課題にも取り組んでいきます。大学院生のテーマには、生殖補助医療、アドバンス・ディレクティブ、終末期ケア、スピリチュアルケアなどがあります。最近では、ロボット技術の医療・介護現場への導入に伴う倫理的課題の分析などもテーマになっています。

4.学際連携に基づく未来志向型ゲノム研究ガバナンスの構築

ゲノム研究の領野で生じつつある新しいELSI について、AMED(※1)研究費を受けながら研究しています。現場とのネットワークを構築することで、研究や医療の推進に必要な知見を得ながら、同時に国際的な状況を広く見渡すことで、長期的なELSIのあり方について検討しています(※2)。

※1 国立研究開発法人日本医療研究開発機構

※2 過去に行われた会議・イベントについてはこちらのページをご覧下さい。